自社サイトに携わっている担当者の中には、「ABテスト」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。しかしどんな風に活用すればいいのかわからない方も多いでしょう。
そこで本記事では
- ABテストの意味
- 実施する目的
- ABテストが必要な場面
- 手順や注意点
について解説していきます。
この記事を読むことで、ABテストの基本を理解できるため自社サイトの改善を行えるようになります。ぜひ参考にしてみてください。
「ABテスト」とは
ABテストとは、AとBの施策を行い、効果が高かった方を採用する方法です。一般的にはウェブマーケティングにて利用され、コンバージョン率を高めるために利用されます。
例えば、新卒向けの採用サイト制作に関するコンテンツを作成するとしましょう。その際、より多くのユーザーにクリックしてもらうため、以下2種類のタイトルを作成します。
- A:新卒向け採用サイトの制作方法とは?ポイントや注意点についても解説
- B:新卒向け採用サイト制作におけるポイントは?制作方法も紹介
これら2つのタイトルをそれぞれ公開し、クリック率が高かった方を採用します。すると1通りのタイトルしか考えなかった場合に比べて、コンバージョン率がアップするのです。
このように、コンテンツが同じでもタイトルを変えるだけでユーザーの行動が変わります。ABテストを行うことで、より効果的にウェブマーケティングを行えるようになるのです。
ウェブページに関するABテストは2種類
ウェブページでは以下のように2つのテストがあります。
- URLを変えないテスト
- 別のURLに飛ばすテスト
1つ目は、URLを変えないテストです。同じURLで外見だけを変更させるため、ソースコードを書き換える手間がかかりません。こうした特徴から、簡単にテストを行え、SEOへの影響が少ないのもメリットとなります。
そして2つ目は、別のURLに飛ばす「リダイレクトテスト」です。こちらの方法ではAパターンとBパターンでそれぞれURLを使い分けるので、2種類のページを用意しなくてはなりません。そのため、デザインを大きく変更する場合や、サーバーの比較を行う場合に用いられることが多いです。
このように、ABテストは比較対象によって手法を使い分けることができます。
ABテストを行う目的
多くのウェブマーケターがABテストを行うのは、以下のような目的があるからです。
- 成功パターンを見つける
- リスクを避ける
- 効率的にコンバージョンを獲得する
ここからは、それぞれの目的について説明していきます。
成功パターンを見つける
キービジュアルやタイトルなど、2種類の施策を比較することで成功パターンを見つけることができます。すると1通りの施策で公開するよりも高いコンバージョン率を期待できます。
さらに、効果測定を重ねていくことでユーザーがどんなビジュアルやテキストに惹かれやすいのかが見えてくるでしょう。すると成功するパターンが理解できるので、効率的にサイト運用を行えるようになります。
リスクを避ける
同一URLで比較できるという点で、SEOにおけるリスク回避にも繋がります。2種類のパターンを検証するために同一のコンテンツを別々のURLで公開してしまうと、ユーザーのアクセスが分岐してしまうのです。
すると本来獲得するべきアクセス数よりも減ってしまい、SEO効果が発揮できなくなってしまいます。そこでABテストを実施することで、アクセス数を確保し検索エンジンからの評価も下がらずに済むのです。
効率的にコンバージョンを獲得する
効率的にコンバージョンを獲得するのも目的のひとつです。通常、2種類のページを作成するには初めからソースコードを記述しなくてはならないので、倍のコストがかかってしまいます。
一方ABテストなら、ソースコードを書き換える必要がないので、リソースやコストの削減になるのです。最近では「Googleオプティマイズ」や「Juicer」といった分析ツールがあり、無料で利用できるものもあります。ツールの使用方法も難しくはないので、初心者の方でも安心してテストを実施できます。
ABテストが必要な場面
ABテストが必要な場面は、このように3つあります。
- ウェブ広告
- LP(ランディングページ)・サービスサイト
- オウンドメディア
以下ではそれぞれの場面について解説していきます。
ウェブ広告
ウェブ広告でも頻繁にABテストが実施されています。ウェブ広告にはSNS広告やディスプレイ広告、リスティング広告などいくつか種類がありますが、どの広告もテキストやビジュアルを変更することでアクセス数が変わっていきます。
SNS広告やディスプレイ広告など、ビジュアルを含む広告では2種類のデザインパターンを用意します。
引用:レバテック
例えば上記のバナーでは、ウェブエンジニアをターゲットにしていますが、イラストやキャッチコピーを変えることで2種類のクリエイティブを作成することができています。
一方リスティング広告では、タイトルを変更して効果を検証していきます。
例えば、上記の美容クリニックでは2種類の広告が打ち出されています。1つはキャンペーン内容を訴求した広告です。もう1つは、具体的に脱毛できる部位を明記した広告です。
こうした広告のうち、効果が高かった方の広告を採用すれば、より多くのユーザーに申し込んでもらえる可能性が高まるのです。
このように2種類のクリエイティブを準備して配信すると、クリック率の違いが見えてきます。そこで効果検証を行い、最終的に優秀だった方を採用するのです。
LP(ランディングページ)・サービスサイト
LPやサービスサイトにおいても、最適なクリエイティブを採用するために用いられることがあります。
LPとは、広告などをクリックして遷移されるページのことです。LPには広告の受け皿としての役割があり、広告を見たユーザーに商品を購入してもらったり、サービスに申し込んでもらったりする目的があります。
また、サービスサイトとはあるサービスを紹介するサイトのことです。サービスに関するコンテンツを中心に発信できるので、サービスの認知拡大に努めたり、ファンを育てたりすることができます。
引用:ブランディア
例えば上記のサイトのように、2つの異なったデザインを作成して効果を検証することが可能です。ユーザーのクリック率や滞在時間を測定し、「どんなキーワードが刺さったのか」「どんなビジュアルなら興味を持ってもらえるのか」といった観点からユーザーの興味・関心を探っていきます。
このように、LPやサービスサイトではビジュアルを含めて検証を行うことが可能です。デザインパターンを絞り切れない場合や、ユーザーの興味・関心が分からない場合に効果を期待できます。
オウンドメディア
オウンドメディアでも様々な検証が可能です。具体的には、以下のようなテストを実施できます。
- キービジュアル
- コンテンツのタイトル
- メニューのデザイン
- バナーデザイン
例えば、上記のように同じコンテンツでも2種類の異なるタイトルを設定してテストを実施できます。多くの場合、ユーザーはタイトルを読んでそのコンテンツを読もうかどうか判断します。そのため、いくらコンテンツが素晴らしくても、タイトルで興味を引かなければ読んでもらえないのです。
このように、オウンドメディアではウェブサイトを構成する様々な要素でABテストを実施できます。広告やLPに比べて運用期間が長くなるため、ノウハウを蓄積できるという点でも利点となります。
ABテストの手順と注意点
ABテストは以下のように4つのステップで進めていきます。
- ABテストの目的を明確にする
- 事前に仮説を持っておく
- 影響範囲を考える
- テスト結果を踏まえて対策を考える
ABテストを行うことで、「なんとなくこっちが良さそう」などといった主観的な考えから脱却できるようになります。ここからは、それぞれのステップについて解説します。
1.ABテストの目的を明確にする
初めに、「何を改善しなくてはならないのか」といった目的を明確にしておきましょう。ウェブサイトを運用していると「アクセス数を増やしたい」「クリック率を上げたい」「認知度を上げたい」など様々な目標が出てきます。
もちろん、これら目標は最終的に「売り上げを拡大したい」といった大きな目標に繋がっています。ただ、「アクセス数を増やしたい」「クリック率を上げたい」「認知度を上げたい」といった目標を達成するには、それぞれに適した施策を行わなくては効果が現れないのです。
こうした特徴から、まずは解析ツールなどを用いてウェブサイトの問題点や課題を整理しましょう。例えばサイトの中で顕著に離脱率が高いページがあるなら、デザインに問題がありそうです。そこでコンバージョンボタンの位置をテストすれば、課題を解決できるかもしれません。
このように目的を1つに絞ることで、どのページのどの要素を検証するのかが見えてきます。チーム内で共通認識を持てるよう、テストの目的は必ず共有しておきましょう。
2.事前に仮説を持っておく
目的が決まったら、問題点とその改善策を考えていきましょう。目的が決定したからと言って、闇雲にテストを実施しても、本当にその変更が問題を解決したのかどうか分からなくなってしまいます。
施策が成功したかどうかを確認するためにも、事前に仮説を立てておくことは重要です。例えば、離脱率が高いページがある場合、以下のような仮説が考えられるでしょう。
- コンバージョンボタンが目立っていないので、明るい色に変える
- コンバージョンボタンの位置が悪いので、トップに持ってくる
- ビジュアルで訴求できていないので、画像を追加する
こうした仮説を考えたら、次の工程に移ります。
3.影響範囲を考える
仮説をもとに、その影響範囲を考えておきましょう。テストによって問題が改善されればいいですが、かえって悪化してしまう場合もあります。こうした事態にも対応できるよう、事前に予測しておくとスムーズです。
4.テスト結果を踏まえて対策を考える
影響範囲を考えたら、早速テストを行いましょう。結果が出たら、仮説と比較していきます。もし仮説の通りに結果が出たら、効果が高かったパターンを採用しましょう。
テストの仮説が間違っていた場合は、「どうして間違っていたのか?」と追及していきましょう。問題を考えることで、次のテストに発揮できます。
ここでポイントとなるのは、PDCAサイクルを回すことです。ABテストにおけるPDCAサイクルとは、以下のようになります。
P:現状を把握して目標を立てる
D:課題を分析して仮説を立てる
C:パターンを作成してテストを行う
A:結果を分析する
PDCAサイクルを回すことで、各ABテストの結果を次のテストや日々のサイト運用に生かすことができます。テストの結果に一喜一憂するのではなく、大きな目標へと繋げられるようにしましょう。
注意点:相違点は1つに絞る
ABテストを行う際は、なるべく相違点を1つに絞るようにしましょう。比較対象が多いと、どの要因が結果に作用したのか分かりにくくなります。
効果検証を行うテストの1つに、「多変量テスト」というものがあります。これはAとBというシンプルな比較対象ではなく、対象をさらに増やして最良の組み合わせを追及する方法です。
例えば、見出しAと見出しB、そして画像1と画像2と画像3の組み合わせのうち、どの方法が最適かを考えます。すると、以下のように6通りの組み合わせが発生してしまいます。
- 見出しA・画像1
- 見出しA・画像2
- 見出しA・画像3
- 見出しB・画像1
- 見出しB・画像2
- 見出しB・画像3
このように、多変量テストは最適な組み合わせを見つけるのに役立ちます。しかし、組み合わせが増えれば増えるほど複雑になり、ウェブマーケティング初心者の方にとっては分析が難しくなってしまうのです。
こうした特徴から、最初の段階では比較対象は2つに絞り確実な効果を見極められるようにしましょう。
まとめ
この記事では、ABテストについて解説しました。同じコンテンツでも、キービジュアルやタイトルによってユーザーの行動は変化します。こうした性質から、多くのウェブサイトではより効果的な施策を見極め、改善していく必要があるのです。
特に、ウェブ広告やLP、オウンドメディアやサービスサイトではユーザーの行動の変化は顕著に現れます。成功パターンを見つけることにより、今後の運用もスムーズになっていくでしょう。
ウェブマーケティングの初心者の方は、ぜひ今回ご紹介した方法やポイントを取り入れてみてください。